[6月14日開催] 第2回国際研修 「ドイツ特許・実案権侵害訴訟の実務とHuawei 事件判決後のSEPを巡る現状」 のご案内

今回のセミナーは、ドイツで日本の弁護士としてドイツの知財業界にどっぷりとつかってご活躍されていらっしゃいます入野田泰彦先生を講師にお招きし、「ドイツ特許・実案権侵害訴訟の実務とHuawei 事件判決後のSEPを巡る現状」と題しまして、下記3つのテーマについてご紹介いただきます。ドイツ特許・実案権侵害訴訟の実務、そしてドイツ知財界における光と影の部分にまで、貴重な経験をされた中からのお話を伺うことのできる良い機会になると思います。皆様お誘い合わせの上、奮ってご参加ください。

本研修は、平成27年度合格者、平成26年度以前の合格者でいずれの会派にも属していない方、また他会派の方にも広くご参加いただけます。この案内が届かない合格者をご存知の方は、ぜひ本研修をご紹介ください。

なお、本研修は、日本弁理士会の継続研修として認定されませんのでご注意ください。

本研修に参加ご希望の方は、6月7日(火)までに、次のウェブサイトからお申し込みください。

https://www.pa-kai.net/seminar_tokyo3.html

1.ドイツ特許侵害訴訟の実務
 ドイツにおける特許侵害訴訟は、その最も有力な裁判所であるデュッセルドルフ地裁で の原告勝訴率が65パーセントから70パーセントに及び、ちょうど日本と逆の数字を示しています。このことから、ドイツの特許権利行使の実務は、権利者優位(Patentee favorable)な実務として知られております。
 その原告に有利な実務を支える制度として、近時最も注目を集めているのが、提訴前の証拠収集方法としてのインスペクション制度Inspectionです。日本の裁判所も、一昨年前から訴訟前の証拠収集の重要性にかんがみ、この制度の導入を真剣に検討しております。この制度の実態を、現地デュッセルドルフ地裁におけるインスペクション手続に参加した経験を踏まえながらお伝えします。
 さらに、権利者優位の実務を支える制度には、いくつかのポイントがあります。

 まず、欧州特許庁にまだグラントされていない生成中の権利(出願中の欧州特許)であっても、権利化に至る前であれば、ドイツ国内実用新案権をその出願中の権利に基づく内容である限り、そのものでも、或いは、市場で発見された競合他社の製品に対する権利行使ができる形に限定する形で出願することが認められています(Branch off)。このドイツ実用新案権は、日本の実務のように、権利行使にあたっての判定等の手続きを要しないばかりか、ブランチオフ出願の1か月後には、権利化ができてしまうため、競合他社に対しての強い抑止力を発揮できます。

 次に、権利行使を行う裁判所は、侵害訴訟を担当する通常裁判所の知財部、及び権利無効に関する手続きを担当する連邦特許裁判所、という別手続きで行われます(Bifurcated system)。この結果、侵害訴訟を権利者が提起しましたら、管轄裁判所は、その審理に集中します。一見明らかに権利無効が明白である場合にのみ、手続きを止めて無効訴訟の帰趨を待って手続きを再開するStayを行いますが、実務上このような扱いは稀です。権利侵害性につき、集中して審理するためのスケジュールは、訴訟開始時において決められた通りにほぼ進行するため、手続きの途上での和解交渉もやりやすい形になっております。その一審に要する時間は、通常ですと1年と2か月程度、マンハイムの裁判所は、もう少し短めです。なお、これに対して、権利無効訴訟の手続きは、2年半程度の期間で終わる旨言われておりますが、その実際は、かなり長期に亘るものがあります。そして、連邦特許裁判所での原告勝訴率(無効化率)は、公式な数字は発表されていません。この無効訴訟手続きにおいては、包袋禁反言の適用はありません。

 クレーム解釈においても、特徴があります。まず、文言解釈の範囲が広く、デュッセルドルフ地裁が主唱して行われておりますのは、「機能的解釈」、すなわち、クレーム文言が持っているそのワードが意味するところの機能を包摂することを大前提に、明細書の記載等でその範囲を画するということなのですが、この機能的解釈というのがとても広範であり、原告を有利にしています。日本の解釈でしたら、文言解釈でかなり限定的になり、その分、均等論で修正する形になりましょうが、法律的主張の立て方としても、均等論によらずに最初から文言上、権利侵害性を主張できた方が、権利者に優位になるように思われます。均等論の主張はどうしても、いったんは、「文言解釈上、権利範囲外になってしまうけれども、均等論によれば・・・」、という主張にならざるを得ず、言わば、文言解釈上は権利範囲外になってしまうことを自認するような構成になってしまいます。

2.Huawei 事件判決後のSEPを巡る実務の現状
 2015年夏の欧州裁判所のHuawei判決を受けて、欧州でのSEPに基づくライセンス交渉、乃至、裁判所での権利行使はどのようにして行われるべきか、ライセンス交渉を競合他社との間で行いながら、しかし、その交渉の行末次第では、権利行使を裁判所で行うことで交渉を有利に進めたい、という場合に、Huawei判決を受けた実務動向がどのようになっているのかを知る必要があります。ドイツでは、Huawei判決前から存在していたのがオレンジブック判決ですが、これら判決を受けて、Sisvel vs. Haier事件に関するDusseldorf地裁判決、Saint Lawrence vs. Dt.Telekom 事件Mannheim地裁判決、NTT Docomo vs. HTC事件Mannheim地裁判決と立て続けに裁判所の判断が出ており、この内容について比較検討します。なお、Huawei判決後に、UKでは未だSEPのライセンス交渉と権利行使絡みの事案での裁判例が出ていないと思われますので、これらの事案の比較検討を通じて、今後の実務動向を予測できるのではないかと考えます。

3.欧州特許弁理士の仕事と、その実務家教育の態様 
 欧州特許弁理士の資格は、欧州特許条約(EPC)によって定められ、欧州共同体の市民権保有者を原則として、いくつかの例外を認めています(域内市民権保有者の配偶者など)。
 日本人でも、この資格を取得して欧州特許弁理士として稼働されておられるケースもあります。この資格は、単なる筆記試験によるペーパーライセンスではなく、受験資格として技術背景を要求され、また、特許事務所での研修期間をも資格要件とされることで、長い実務教育期間を経ることが必要です。欧州とりわけドイツでは、弁理士の地位は高く、収入も期待できることから、優秀な人材の受け皿になっていますし、その教育課程は、大教室での机上の議論を中心にしたロースクールよりもはるかに実践的です。今般、小職と同行しております欧州弁理士のうち、ハンブルクで生まれ育って、ドイツ語が母語ではあるけれども、生粋の日本人で、日本語も母語、そして、ドイツの教育課程で英語は堪能、さらにフランスの特許事務所での3年間の研修期間を経ることで、フランス語にも堪能という化学系の弁理士の方がいらっしゃいます。この機会に、その教育課程と実務への入り方を説明戴くのも、欧州知財実務の背景理解の一助になるかと存じます。

【記】

テーマ: ドイツ特許・実案権侵害訴訟の実務とHuawei 事件判決後のSEPを巡る現状
講 師: 入野田 泰彦 先生 (弁護士(56期)、ドイツ、TaylorWessing法律事務所)
日 時: 2016年6月14日(火) 受付6:00pmより 講演6:30pm~8:40pm
場 所: 弁理士会館2階AB合同会議室
会 費: ・平成27年度合格者でいずれの会派にも属していない方
 → 研修: 無料 懇親会: 2000円
・グリーンPA会員
 → 研修: 無料 懇親会: 2000円
・PA会会員
 → 研修: 2000円 懇親会: 3000円
・PA会会員以外の弁理士会会員
 → 研修: 3000円 懇親会: 4000円
・平成26年度以前の合格者で弁理士登録をされていない方
 → 研修: 3000円 懇親会: 4000円

その他:
食事は用意いたしませんので、各自でおとりください。また、研修終了後には懇親会を行います。こちらにもぜひ、ご参加下さい。

本研修に関するお問い合わせ等いただく場合及び研修の申込をキャンセルされる場合は、pa2016seminar@gmail.comまでご連絡ください。懇親会の申込をキャンセルされる場合についても同様にご連絡下さるようお願いします。

以上

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